
工場で起きる潜在トラブルと
帯電防止剤による予防策
冬は、製造現場における静電気トラブルが最も増える季節です。気温の低下と湿度の低下が同時に起こることで、帯電が蓄積しやすい環境が整い、普段は問題にならないわずかな摩擦や剥離が、大きな帯電量を生み出します。静電気は目に見えないため軽視されがちですが、実際には 生産効率の低下・品質不良・異物混入・センサー誤作動・ライン停止 など、さまざまな潜在トラブルの原因となる極めて厄介な存在です。
本記事では、冬に静電気が増える科学的背景から、実際の製造現場で起こりやすいトラブル、さらに 帯電防止剤を使った根本的な予防策 までをわかりやすく解説します。
既存の除電ブロワーやアース対策では限界を感じている企業様にとって、改善のヒントとなる内容です。
◆なぜ冬は静電気が多発するのか?
冬場に静電気が起こりやすい理由は、単純な「乾燥」だけではありません。要因を整理すると、次のような複合要素が同時に作用しています。
① 空気が乾燥し、電荷が逃げにくくなる
静電気は、帯電した電荷が空気中の水分を通じてゆっくり放電することで自然放電します。しかし冬は湿度が40%以下になることも多く、空気中の水分が極端に少ないため、電荷の逃げ道がなくなります。
特に 湿度30%以下になると、表面抵抗値が100倍以上 に跳ね上がることが研究でも示されています。
② 材料自体が乾燥し、帯電しやすい状態になる
樹脂、フィルム、繊維などは、素材内部に含まれる微量水分が減少すると、電荷を保持しやすい状態になります。冬の工場ではこの“乾燥した素材”がラインに多く流れるため、帯電リスクはさらに増大します。
③ 摩擦・剥離が増え、電荷の分離が起こりやすい
例えば、樹脂ペレット同士がホッパー内で摩擦する、フィルムを剥がす瞬間に帯電が発生する、包装材同士が擦れるなど。
冬は摩擦帯電・剥離帯電の発生量が夏の数倍に達するケースも珍しくありません。
◆冬に製造現場で起こる静電気トラブル
冬の現場で特に多いトラブルを具体的に見ていきます。
① 粉体の付着・飛散
粉体は乾燥状態で帯電しやすく、静電気で装置に吸着すると供給量が不安定になります。また、逆に帯電反発で粉が飛散し、歩留まりが悪くなることもあります。
②フィルムの貼り付き・巻き取り不良
静電気によりフィルムがローラーに強く吸着し、貼り付きや蛇行が発生します。さらに帯電したフィルムは異物を吸着しやすく、品質不良の原因に。
③センサー誤作動
光学式・電気式センサーは、微弱な静電気干渉で誤作動することがあります。特に軽量ワークや粉体の充填ラインでは、静電気が“ゴースト信号”を生み、ライン停止につながることも。
④ 異物混入・外観不良
静電気に引き寄せられた繊維片や微小な塵が製品に付着し、外観不良やクレームの原因となります。
⑤人体への放電による危険
静電気が溜まった状態で作業者が設備に触れると、火花放電が起こる場合があります。粉体を扱う工程では、引火・爆発を引き起こす危険もあるため非常に注意が必要です。
◆静電気対策における“落とし穴”
多くの工場が実施している対策として、除電器・アース・加湿器の設置などがあります。しかし現場では、「導入したのに改善しない」「冬だけ効果が弱い」という悩みもよく聞きます。
理由は次の通りです。
- 除電器は触れた周辺の帯電を除去する対症療法であり、帯電そのものの発生は止められない
- 加湿器では広い工場空間の湿度を均一に保てない
- アースは電荷を逃がす仕組みだが、物体そのものの帯電量は減りにくい
つまり、帯電の発生源を抑える根本対策ではないため、冬の帯電量の増加を完全には抑えられないのです。
◆帯電防止剤が根本対策として有効な理由
帯電防止剤は、素材表面に 導電性の薄膜 を形成し、電荷がたまりにくい状態をつくります。
●帯電防止剤のメカニズム
- 表面に薄い導電層をつくり、電荷を分散・逃がす
- 吸湿性を高め、表面抵抗を下げる
- 摩擦係数を下げ、摩擦帯電の発生そのものを減らす
- 帯電ムラをなくし、突発的な高帯電(スパイク帯電)を抑える
加湿や除電器と違い、素材そのものの帯電性を制御するため、冬でも安定した効果が得られるのが大きな特徴です。
🔍まとめ
冬の静電気は、生産ラインの効率や品質に大きな影響を与えます。
加湿や除電器では限界があり、帯電そのものを抑える帯電防止剤が最も効果的な根本対策です。
冬のトラブル削減、品質安定、クレーム防止のためにも、帯電防止剤の導入・見直しが重要な時期といえるでしょう。










