
プラスチック製品の品質を守る
業界別に見る脱脂剤の選び方と使い方
プラスチックは軽量・加工性・コスト面に優れるため、製造業から自動車、電子機器まで幅広く利用されています。しかし、プラスチック表面には離型剤、油分、皮脂、粉塵などが付着しやすく、これが原因で塗装不良・接着不良・印刷不良が起きることがあります。
そこで欠かせないのが「脱脂剤」を使った前処理です。
本記事では、プラスチックの脱脂における 業種別のニーズと最適な脱脂剤の選び方 を解説します。
◆製造業におけるプラスチック脱脂の重要性
①製造現場の課題
射出成形や押出成形の工程では、金型から部品を離すためにシリコン系やワックス系の離型剤が使用されます。これらはプラスチック表面に残りやすく、後工程の塗装や接着に大きな悪影響を与えます。
- 塗装ムラ・剥離
- 接着強度不足
- マーキング・印刷のにじみ
といった不具合を防ぐため、製造業では安定した脱脂工程が欠かせません。
②適した脱脂剤
- アルコール系:簡易的な脱脂に有効。ただしシリコン系には不十分。
- 炭化水素系溶剤:強力な脱脂性能を発揮。大量処理にも対応可能。
- 専用工業用脱脂剤:樹脂にダメージを与えにくく、精密部品にも使用可能。
➤ 製造業では、対象部品や工程ごとに「安全性」と「洗浄力」のバランスが求められます。
◆自動車部品業界におけるプラスチック脱脂
①自動車に使われるプラスチック部品
自動車では、ABS、PP、PC、ナイロンなど多様なプラスチックが使われています。特に外装・内装パーツには塗装や加飾フィルムが施され、電子制御系統には樹脂製のコネクタやハウジングが利用されています。
②脱脂が必要な理由
自動車部品では「外観品質」と「耐久性」が最も重視されます。表面に油分が残ると以下のリスクがあります。
- 塗装の剥がれやクラック → 外観不良、耐候性低下
- 接着不良による部品外れ → 安全性リスク
- 電子部品への不良伝播 → 車両全体の信頼性低下
③適した脱脂剤
- 速乾性スプレータイプ:組立ラインでの即時処理に便利。
- 中性・弱溶剤型:PCやアクリルを白化させない処方が望ましい。
- 低臭・低毒性タイプ:作業環境改善と安全性の両立。
➤ 自動車部品業界では、「強力すぎる溶剤はNG」「樹脂を侵さず、かつ確実に脱脂」がポイントです。
◆電子機器業界におけるプラスチック脱脂
①電子部品に使われるプラスチック
コネクタ、ハウジング、スイッチ部品などにはナイロン、PBT、LCPなど耐熱性の高いエンジニアリングプラスチックが使われます。また、外装ケースにはABSやPCが多用されます。
②電子機器での課題
電子機器の製造では「微細な油分や微粒子の残留」が不良につながります。
- はんだ付け不良
- コネクタ接触不良
- 塗装の剥離
- 静電気によるホコリ付着
精密部品ほどわずかな油膜が問題になるため、徹底した脱脂が求められます。
②適した脱脂剤
- アルコール系(IPA、エタノール):微細部品の表面洗浄に最適
- 専用精密洗浄剤(中性・低残渣):静電気対策や基板周辺にも使用可能
- 超音波洗浄+水系脱脂剤:大量部品の一括処理に有効
➤電子機器業界では「精密性・残留防止・静電気対策」を満たす脱脂剤が求められます。
◆脱脂剤選びのポイント(共通)
- 対象樹脂との適合性確認
→ PCやアクリルは白化リスク、PVCは溶解リスクがあるため必ず事前テスト。 - 作業環境・安全性
→ 揮発性や臭気、作業者の健康リスクを考慮。 - 工程の効率化
→ ライン作業なら速乾タイプ、大量処理なら水系や浸漬方式が適する。 - コストと安定性
→ ランニングコストだけでなく、品質不良を防ぐことでトータルコスト削減に。
🔍まとめ
プラスチックの脱脂処理は、どの業界においても製品品質を左右する重要なステップです。
- 製造業では「離型剤や加工油の確実な除去」
- 自動車部品では「外観品質と安全性確保」
- 電子機器では「精密性と静電気対策」
それぞれのニーズに応じた脱脂剤を選ぶことで、不良率を下げ、品質と生産性を両立できます。
➤脱脂剤は「万能」ではありません。必ず対象樹脂との相性を確認し、試験導入 → 本格運用 の流れで進めることをおすすめします。









